Tomas Luis de Victoria(c.1548-1611)
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16世紀のスペイン音楽は、器楽音楽と世俗音楽に独自の発展を見せているが、 宗教曲には フランドル や イタリアからの影響が強い傾向が伺える。その中にあってビクトリアは スペイン的な情熱と パレストリーナ 風の ポリフォニー音楽を結び付け、16世紀のスペイン宗教音楽の頂点を極めた。
ビクトリアの対位法処理は非常に熟練したものでありながら、それ自体を 追及するということはなく、内心の情熱をポリフォニーの綾の中に 織り込むことにその主眼が置かれている。歌詞の内容に対してその表出に ふさわしいモチーフが選ばれ、その組み合わせによって音楽が構成されており、 その意味でイタリアの マドリガーレ とも共通点を持っているといえる。
しかしマドリガーレがよく行った 音画法 は あまり頻繁には用いられず、 歌詞の内容に合わせて大まかな感情の雰囲気を作り出す傾向が強い。 これは、同時代のスペインの作曲家に共通した特徴である。
ビクトリアの音楽は、この独特のポリフォニー技法に加えて、不協和音等を 大胆に用いることで情熱的な音のドラマを展開しており、 その劇的な力強さからは宗教的熱情がダイレクトに感じられてくる。 まさにスペインならではの音楽といえるだろう。