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バロック音楽概観2 〜各国における音楽の特徴最終更新日:
2002年3月21日
まずイタリアでは、バロック時代を通じてオペラの発展が特筆される。 オペラはその中心地をフィレンツェ、ヴェネツィア、ナポリと移していく中で、 モノディ様式の歌唱がレチタティーヴォとアリアに分解し、より旋律的な 歌となったアリアを中心に音楽が展開する形式へと変化していった。 さらにヴァイオリン、リコーダー(フラウト・ドルチェ)らの器楽曲が この時代に発達し、コレルリ、ヴィヴァルディの時代には、ソナタや コンチェルトの形式が確立されたことも見逃せない。 一方、フランスではイタリアでの音楽に影響を受けながらも、常に 自分たちの感性を反映させた音楽を発展させた。まず、オペラについては フランス語の発音の持つ音楽性を活かした朗唱風の歌を中心とし、 またバレエをその中にふんだんに取り入れた独自のスタイルを確立している。 楽器についてもヴィオラ・ダ・ガンバやフルート(フラウト・トラヴェルソ)を 中心にイタリアとは方向の異なる発展を見せ、フランス風序曲を伴う管弦楽組曲 という形式も確立している。 ドイツは、オルガン音楽に独自の発展を見せたとはいえ、音楽のスタイルに関しては イタリアとフランスの双方の影響を受け、総じて自国独自のスタイルを 確立できなかったように思われる。ただその中にあって、テレマンやJ.S.バッハらは 他国の音楽の要素や当時の流行をふんだんに取り入れた作品を多く残した。 そこで取り入れられた他国の要素は、ドイツに入る時点で本来のものとは 若干雰囲気の異なるものに変化しており、それらの要素を強烈な個性で一つに 結び付けたバッハの作品は、その完成度の高さと相まってバロック音楽の歴史全体 の中で一際輝きを見せる音楽となっている。 最後にイギリスであるが、この国はパーセルの時代に英語の発音を活かした 自国の音楽のスタイルを確立しかかった時期があるが、そのパーセルが若くして 亡くなると、以後は自国のスタイルを発展することなくイタリア・オペラを 消費する国となった。ただし、イギリスはその豊かな経済力を背景に 音楽家と音楽活動を支え、イタリア・オペラの発展を担うと共に、バロック末期 にはヘンデルのオペラの傑作群を生み出すことになる。自国のスタイルを 築けなかったとはいえ、バロック時代の音楽に与えた影響は大きいと 言わざるを得ない。 Copyright © 2002 M.A.B. Soloists, All Rights
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