クープランは前時代のリュリや同時代のドラランドと異なり、 オーケストラ伴奏と合唱による大モテットを残していない。
これはドラランドがそれを許さなかったためとも言われるが、 このため彼の宗教曲は小モテットとオルガン曲のみに限られている。 しかし、その両分野にクープランはフランスバロック期全体を代表する
傑作を残した。特に女声2声と通奏低音のためのルソン・ド・テネブレは 傑作として広く知られているが、それ以外にもクープランは この「おお主よ」を含めて小モテットの佳作を多く作曲している。
この曲は、クープランの作品としては珍しく男声のみの3声部のために 書かれており、何節にも及ぶ歌詞に基づいた構成的な曲構造と、
随所に見られる力強い響きが印象的である。 曲は歌詞の内容に合わせて、時には重く、時には語る様に、また時には 神秘的に進んでいくが、最後の"cantabimus(歌う)"の部分で
長いメリスマに基づく華麗なポリフォニーを展開して 壮大なクライマックスを築く。フランス・バロック音楽の様々な面を 同時に合わせ持った特徴的な作品である。
(宮内)
資料
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歌詞対訳
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M.A.B. 演奏
(冒頭 1分間、au 形式、480k)
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