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音楽資料室中世ルネサンスバロック古典・ロマン派近現代解説項目

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各旋法の特色

  • [] ドリア旋法
  • [] フリギア旋法
  • [] リディア旋法
  • [] ミクソリディア旋法

1.ドリア旋法

note (レミファソラシドレ)

「いわゆる短調(近代短旋法)に類似した旋法であるが、 導音のないことがその相違を明確にしている。」

「これは、厳粛、優雅、つつましやか、控えめであるが、 常に平穏、静寂の旋法である。観想の旋法、ともいわれるが、 とりわけ平安の旋法、という評言にふさわしいものである。」

(水嶋良雄著「グレゴリオ聖歌」音楽の友社より)

教会旋法の中で最もスタンダードといえる旋法で、 落ち着いた安定感のある旋律を作る。「平安の旋法」 という表現はまさに的確といえるだろう。 その反面とりわけ際立った特徴もなく、やや平凡な 印象を受けることもある旋法である。

2.フリギア旋法

note (ミファソラシドレミ)

「近代調性からもとも遠く隔てられた旋法ということが できよう。この旋法は和声学者をもっとも難渋せしめている。 というのはほとんどの旋法がその終止音を『いわゆる主音』の ごとく考えているのにもかかわらず、この旋法だけは そのように考えられないからである。」

「『天と地の間に浮かびながら停止する旋法』という(中略) 評言はそこからでている。」

「これは、甘美、神聖、恍惚、永遠の旋法である。」

(水嶋良雄著「グレゴリオ聖歌」音楽の友社より)

近代調性に最も結び付けにくいために、 逆に最もグレゴリオ聖歌らしい印象を受ける旋法である。 終始フワフワしたような独特の甘美な旋律を生み出す。 筆者が個人的に最も好きな旋法でもある。

「ファ->ミ」という上方からの解決を特徴として 持っており、この終止はバロック以降も「フリギア終止」として その面影を残すことになる。

3.リディア旋法

note (ファソラシドレミファ)

「『諸音程の配列具合』および『基音の下が半音』という ことから、しばしば近代長調(長旋法)をしのばせる旋法である。 とはいえ、黄金時代のかつての作曲家たちは、 きわめて卓越した諸作品をこの中から作り出している。」

「本旋法による我々の古曲は、流麗、端然、確固たる特徴が あるとともに、軽妙敏速、快活さをあわせ持っている。 爽快、新鮮、すがすがしさを感じさせることもある。」

「各種の多様な感情表現に不足することのない旋法と いうことができよう。」

(水嶋良雄著「グレゴリオ聖歌」音楽の友社より)

引用にある通り、リディア旋法はグレゴリオ聖歌そのもの にとっては重要な旋法のひとつである。しかしルネサンス期の 音楽の中では、旋律的・和声的理由のために 大抵「シ」が「シ−フラット」に変化してしまったために 近代長音階(イオニア旋法)と全く同一になり、 その個性は失われていくことになる。

4.ミクソリディア旋法

note (ソラシドレミファソ)

「充分な響きの旋法、大きくひろげられた音程の旋法、 そして特にブールゴオル・デュクードレが評した<超長旋法>である。」

「明快・熱烈・感動を表現する旋法、喜悦にみちた飛翔、 熱狂的な飛躍、凱歌にふさわしい躍動的なものを表現しうる旋法であるが、 Lauda Sion の旋法ということは以上の諸特徴のよき象徴である。」

「またとりわけ低い諸音符においては、確信、荘厳にして 断固たる確信を示すものであり、完全で申し分のない喜びの旋法、 要するに、充満、充全の旋法である。」

(水嶋良雄著「グレゴリオ聖歌」音楽の友社より)

基音の「ソ」に対し、その下の「ファ」および その上の「ラ−シ」がすべて全音の間隔で並んでいるために、 非常に明るい開放的な旋律を生み出す。 「超長旋法」とは名言といえよう。

(宮内)


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