中世ルネサンス音楽用語集


イソ・リズム法

中世の作曲技法。同一のリズム型がある特定の声部で繰り返されるというもの。 反復されるリズムは普通テノール(当時の最下声部)におかれる。 またイソ・リズム法の音楽ではリズム型だけでなく 定旋律 も反復していくことが多い。

イムヌス

「賛歌」と訳される。もともとは神や英雄をたたえるギリシア語に由来する 言葉であるが、狭い意味ではカトリック教会の聖務日課で歌われる聖歌を指す。 その特徴は韻文詩の1音節に1音符を付した旋律を、各節ごとに繰り返すことにある。

ヴェネツィア楽派

16世紀中頃から17世紀初頭にかけてヴェネツィアで活躍したフランドルおよび イタリアの作曲家による楽派。サン・マルコ聖堂を中心地とし、 ヴィラールト、A.ガブリエリ、 G.ガブリエリ といった作曲家を輩出した。 技法上の特徴は 複合唱 の使用であり、 ルネサンスとバロックの橋渡しをするという重要な役目を担っている。

音画法

主にルネサンス後期に用いられた作曲技法。音符の並べ方で単語の意味などを 表す方法。イタリアの マドリガーレ で多用されていた。

シャンソン

フランス語による世俗歌曲。中世初期には単旋律であったが、中世の後期には 多声部による合唱となり、ルネサンス期にはポリフォニーによるシャンソンが 発展する。中世時代のシャンソンとしては デュファイ、 バンショワのものが有名であり、ルネサンス期のシャンソンとしては ジャヌカン やセルミジのものが有名である。

通模倣様式

ルネサンス期の代表的な作曲技法。歌詞をいくつかの節に分割してそれぞれの 節に動機(モチーフ)を与え、全声部がその動機を模倣することで曲を 構成していくという手法。ルネサンス前期に ジョスカン・デ・プレ が 確立し、それ以後ヨーロッパ全土に普及した。

定旋律

対位法作曲の基礎になる旋律で、はじめから与えられているもの。 イソ・リズム様式 ではこの旋律が特定の声部に置かれて それに対旋律が付されていくが、通模倣様式 では この旋律を全声部で模倣していく。このように一口に定旋律といっても その使われ方は作曲技法ごとに大きく異なることに注意されたい。

パラフレーズ

他の音楽から旋律を借用して使用する際に、 もとの旋律にはない音を装飾的に加えること。

複合唱

ヴェネツィア楽派 の音楽書法。合唱団を分割して 互いに歌いあわせたり、時には一緒に歌わせて対比を出したりするというもの。 2つのオルガンと合唱席が互いに向かい合っているというサン・マルコ大聖堂の 特殊な構造に目を付けた作曲家ヴィラールトが考案したといわれる。

フランドル楽派

15世紀の半ばから16世紀の末までの間、約150年間に及んでヨーロッパ全土の 音楽をリードし続けた大楽派。その中心地であるフランドル地方とは 現在の北フランスからベルギーの辺りの地域を指す。 オケゲムジョスカン・デ・プレイザーク、 オブレヒト、ラッスス と いった作曲家を輩出。

ブルゴーニュ楽派

15世紀の前半にフランスの東北部で栄えた楽派。それまでのヨーロッパ各地で 発展していた音楽技法を一つにまとめ、中世とルネサンスとの間の橋渡しを するという役目を担う。 デュファイ、 バンショワといった作曲家を輩出。

マドリガル

16世紀の半ばからイギリスで流行した多声による世俗曲。イタリアの マドリガーレ の影響から始まったが、 やがて英語の発音やリズムを活かしたイギリスならではの音楽に発展し、 17世紀の前半まで繁栄を見せる。

マドリガーレ

16世紀にイタリアで栄えた世俗声楽曲。まず世紀の初頭に フランドル楽派通模倣様式 を採用した、貴族社会にふさわしい 芸術性の高い世俗曲を確立される。その後、世紀末には劇的表現を求めて 音画法 や半音階を用いた手法が発展し、 その末期にはソロ形式の物も多い。

モテトゥス(モテット)

この言葉は時代によって様々な意味に用いられているが、中世後期から ルネサンスにかけては、ラテン語の宗教的歌詞をテクストとする 多声部による楽曲を指すことが多い。

モノディ様式

1600年頃にフィレンツェで生まれた声楽曲の形式。それまでの声楽的 ポリフォニーに反発してできた独唱曲の形態。古代ギリシア音楽の 復興を目指し、詩のリズムを活かした半ば語る様な歌い方を特徴とする。

ランディーニ終止

中世の音楽技法の一つ。導音から主音に解決するする際に、第6度音を 通過するというもの。この終止は ジョスカン・デ・プレ の 頃まで見られる。なおこの技法は ランディーニ 自身が考案したものではないと言われている。

(宮内)


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