1956年生まれのフランスのカウンターテナー。 1975年頃にはフォークミュージック、ロック、ジャズなどを ファルセット声域で歌う歌手であったが、やがて古楽演奏家 ルネ・クレマンシックの活動に加わり中世、ルネサンス、 バロックの音楽の演奏を始めるようになった。 その後ソルボンヌ大学で音楽学を学び、1984年には ウィリアム・クリスティ率いる レザール・フロリサンに参加。 1985年には自らアンサンブルグループ、イル・セミナリオ・ムジカーレを 結成。現在はセミナリオを中心に活動している。レーヌの歌唱は従来のカウンターテナーの淡泊で中性的な歌唱とは 全く異なり、官能性に満ちた表現と暖かい音色を特徴としている。 カークビー、ヤーコプスも そうであるようにレーヌも 従来の声楽教育を全く受けずに自らの歌唱法を確立したゆえに 革命者となった歌手と言えよう。レーヌは、ポピュラー音楽の世界では ファルセットは自然な声として使われていると言い、カウンターテナーとして 古楽を歌うようになってからも発声に関してはフォークソング歌手を 手本とし、表現に関しては女性歌手を参考にしていたという。
またそのレパートリーも非常に多岐に渡っている。 それもクレマンシックとの活動でイタリア音楽を身につけ、 レザール・フロリサンでの活動でフランス音楽を学び、さらには アンサンブル・ジル・バンショワやアンサンブル・オルガヌムでの 活動で中世音楽を身につけるという超一流グループを渡り歩いての レパートリーであるから、どの演奏でも曲本来の魅力を十分に引き出した 演奏になっている。
さらに最近はカール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」の録音や、 ロックのアルバムもリリースするなどますます多彩な活動を 展開している。いま最も注目されるカウンターテナーと言っていいだろう。
(宮内)