ここでは、音律を論ずるに当たって最低限必要な基礎的事項を簡単にまとめる。
「振動数比が簡単な整数比であらわされる音程」を純正音程という。 純正音程を同時に出すと、うなりや濁りをもたずに美しく響く。 この状態を俗に「ハモる」という。音律を論ずるときには、以下の振動数比にある音程を 協和する純正音程として扱う。
純正な長三和音は純正な5度と長3度で作られる。1:1 ユニゾン 1:2 オクターブ 2:3 5度 3:4 4度 4:5 長3度 5:6 短3度同様に純正な短三和音は純正な5度と短3度で作られる。振動数比 = 4:5:6しかし、12音によって作られるすべての長三和音と短三和音を純正にすることは 不可能である。そこで何を純正にして何を不純にするかの考え方によって どのような音律ができるかが変わってくる。振動数比 = 10:12:15
すべての音律の基礎となるのがこの2つの音律である。 音律を論じるときの用いられるほとんどの用語は、この2つの音律を 理解することによって、その意味を捉えることができる。
主要三和音(C-durではC,F,G)が純正な長音階のこと。Cを1としてC-durの純正律を実際に算出してみる。
よって以下のようになる。G = 3/2 × C = 3/2 E = 5/4 × C = 5/4 F = 4/3 × C = 4/3 A = 5/4 × F = 5/3 D = G ÷ 4/3 = 9/8 H = 5/4 × G = 15/8この結果から2種類の全音ができることが分かる。9/8の方を 「大全音」、10/9の方を「小全音」と呼ぶ。C D E F G A H 1 9/8 5/4 4/3 3/2 5/3 15/8 \ / \ / \ / \ / \ / \ / 9/8 10/9 16/15 9/8 10/9 9/8→[純正律の特色]
ある音に対し5度を12回積み重ねると、もとの音に 近い音に戻る(実際には少し高くなる)。これを利用して 1オクターブを12分割した音階。最後にできる狭い5度は、普通Es-Gisにおかれる。
→[ピタゴラス音律の特色]C G D A E H Fis Cis Gis Es B F C \ / \ / \ / \ / \ / \ / \ / \ / \ / \ / \ / \ / 3/2 3/2 3/2 3/2 3/2 3/2 3/2 3/2 PC 3/2 3/2 3/2
5度を12回積み上げてできた音ともとの音とのずれ(約22セント) ピタゴラス音階のEs-Gis間の5度はこれだけ狭くなる。
5度を4回積み上げてできる3度と純正な長3度とのずれ(約24セント) ピタゴラス音階のEと純正律のEの差に一致する。
振動数比を対数であらわす単位。平均律の半音を100とする (つまり1オクターブを1200とする)ように定義される。→[各音律の特色]よって、振動数比をR、セント値をCとすると、
という関係が成り立つ。R=2^(C/1200) ←→ C=1200 × log_{2} R(宮内)