教会旋法とはグレゴリオ聖歌の音階のことといえる。 すなわち根音に対してどんな音程関係にある音を 旋律の音として用いているかという相対的な構造を指す。→[各教会旋法の特色]バロック以後の音楽の旋法には 長音階(ドレミファソラシド)と 短音階(ラシドレミファソラ)しかないが、 グレゴリオ聖歌ではこの2つとは違う旋法が用いられていた。 (以下ドレミで階名、CDEで音名をあらわすものとする)
その旋法とは、
の4つである。これを見て、始めの音を変えただけの同じものと 考えるのは早計である。例えば同じ音を使った音階でも 長音階と短音階では「明るい-暗い」「楽しい-悲しい」 という違いがでるように、それぞれの旋法によって 作られる旋律の雰囲気はおのずと変わってくる。 グレゴリオ聖歌は単旋律の音楽であるから、 このような多彩な旋法によって微妙なニュアンスの違いを 歌い分けたのであろう。
また先に書いたように、旋法は音の相対関係をあらわすものなので、 根音(教会旋法では基音、または終止音という)の高さには関係がない。 すなわちD根音のドリア旋法もあれば、G根音のドリア旋法も作ることができる。 それはD-durの音階とG-durの音階をそれぞれ作ることができるのと 同様なことである。この点も誤解の無いように注意が必要である。
1525年になって、この4つの旋法に エオリア旋法(現在の短音階)とイオニア旋法(現在の長音階) が加えられて全部で6つの教会旋法ができることになる。
- エオリア旋法(ラシドレミファソラ)
- イオニア旋法(ドレミファソラシド)
なお実際には、この6つの旋法それぞれに正格旋法と変格旋法 というものが存在し、全部で12の旋法ができるわけだが、 正格と変格の区別は中世以後の音楽では次第に意味を失っていくので、 ここではその違いについては触れないことにする。
(宮内)