最近のCDより


モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り

BV-ドイツ・ハルモニア・ムンディ / BVCD-1910〜11
4,800円

演奏者

Cd
コンラート・ユングヘーネル
カントゥス・ケルン,コンチェルト・パラティーノ
S
ヨハンナ・コスロフスキ、マリア・クリスティーナ・キール
A
パスカル・ベルタン
CT
ベルンハルト・ランダヴァー
T
ゲルト・テュルク、ヴィルフリート・ヨッヘンス
B
シュテヴァン・シュレッケンベルガー

リュート奏者ユングヘーネルが率いるドイツの重唱団 カントゥス・ケルンによるモンテヴェルディの名曲の録音。 歌手全員がソリストとして活躍できるほどの技術と音楽性を持つ グループであるうえに、伴奏陣もユングヘーネルのリュートや コンチェルト・パラティーノが好演しており、 非常にレヴェルの高い演奏になっている。

ここ数年、様々な論議と意欲的な録音が展開されている 「聖母マリアの夕べの祈り」であるが、この録音でも多くの試みがなされており、 今やガーディナーの89年の録音を「決定盤」などと言って 安穏としている場合ではなくなってきた。

ユングヘーネルと音楽学者カーターがこの録音で提案する解釈は「1人1パート」。 これは、王侯のための音楽は合唱団のために書かれるものではなかった という考えによっている(当時のスコアには合唱団とソリストの 区別がされていないため、スコアだけからこの判断の真偽を 判定することはできない)。

この試みはメンバー全員が高い技術を持つカントゥス・ケルン ならではの企画といえるが、とても興味深い結果を生んでいる。 従来の演奏でのソロの曲と合唱の曲の対比がなくなったために スケールの大きさみたいなものが失われた反面、 これまでの合唱の中で失われていた音のテクスチャが くっきりと浮かび上がり、マドリガーレ的な音楽に仕上がっている。 それによって従来の演奏とは違った劇性を感じさせることとなった。

特に10声部の2重合唱"Nisi Dominus"などは、 従来の壮大なイメージを一新するような滑らかな旋律線の からむ音楽になっており、この曲の新たな魅力を 発見することができた。

また「聖母マリアの夕べの祈り」に関する最近の争点と言えば "Lauda Jerusalem"と"Magnificat"のピッチの問題がある。 イギリスの指揮者パロットの研究によると、この2曲は書かれた 調性よりも低く移調するべきであるということで、最近の録音では この説を採用するものも増え始めている。

カントゥス・ケルンの録音では、"Lauda Jerusalem"のみを 移調するという折衷案を取っている(問題の性格上、片方だけ移調すると いう選択肢はありえないような気もするが…)のだが、 この問題もまだまだ解決を見そうにはない。

とにかくこの録音は、非常に楽しめる演奏であると同時に、 この曲をめぐる論議と試みはこれから先の数年間は まだまだ続いていくだろうということを 感じさせる一枚であった。

(宮内)


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