音楽と言葉の関係が重要であることは言うまでも無い。その当時の音楽の アーティキュレーション、音色、リズムを正しく理解するためには、 その時代の言葉の発音の理解が不可欠である。→[ 各地域のラテン語の発音]中世・ルネサンス期のヨーロッパを言語学的観点から一言で言うと、 話言葉として用いられる母国語と教会を中心とする一部の知識層が 共用語として用いるラテン語というバイリンガルから成る時代、と言える。
我々の時代でこそ、一部の教会を除き、ラテン語を典礼に用いることが 無くなったが、中世やルネサンス期の教会においては、ラテン語が教会内での 唯一の共用語であった。そのため、この時代の宗教音楽の歌詞には、 主にラテン語が用いられた。
また、楽譜の記譜の手法の確立なども、当時は教会が中心的役割を 果たしていたため、現存する楽譜としては、ラテン語による宗教曲が最も多い。
そこでこの資料室では、中世・ルネサンス期に用いられた中世ラテン語の 発音を、地域および年代による違いに分けて紹介するとともに、 それぞれの曲に適していると思われる発音を示すことにした。
(新郷)