M.A.B. Original Concert

創立10周年記念 連続演奏会・第一回
ルネッサンス期の宗教音楽の系譜

【パンフレット表紙文】

ルネッサンス期は、合唱音楽の時代と言い換えても差し支えないほど、 音楽史上、合唱音楽が最も栄えた時代です。

主だった作曲家は、宗教曲にその精力を注ぎ、“合唱音楽の宝庫”と 呼ぶにふさわしい、膨大な数の曲を残しています。本日の演奏会では、 そのようなルネッサンス期の音楽の中で、特に流れが把握しやすい、 ラテン語による宗教音楽にスポットを当て、その芽生えから終焉までを 駆け足でご紹介します。

ルネッサンス音楽は、“ポリフォニー様式”と呼ばれる多声部音楽様式を 最大の特徴とする音楽で、15世紀の中期から16世紀末期にかけて、 ヨーロッパのほぼ全域に浸透していました。

具体的な特徴は、大きく分けて3点に要約できます。すなわち、各声部が 対等に扱われること、次に、各声部の旋律が優美で美しく、それぞれが 独立した流れを持つこと、最後に、それらが複雑に絡み合うこと、という点です。

本日の演奏会は、2部で構成されています。第1部では、ルネッサンス音楽の 芽生えから確立までの歴史を紹介し、第2部では、確立された音楽語法に 基づいた各地域独自の音楽の開花、さらには、その結果として生じた ルネッサンス音楽様式の崩壊の歴史を概観します。

第1部では、ルネッサンス初期の3人の巨匠の作品を、年代を追って演奏します。 各曲を通して、ルネッサンス音楽の発生、確立過程、音楽語法の確立、 という一連の流れをご理解いただけるよう構成しました。

第2部では、ルネッサンス後期のイギリス、イタリア、スペイン、 フランドルという各主要地域を代表する作曲家の作品を採り上げます。 地域毎に、旋律や和声の色付けおよび旋律の模倣の扱いの違いが示されます。

各地域で独自の音楽が確立したことにより、旋律が全音階的で優美なものから 半音階的で刺激的なものへと変化したり、各声部が旋律的で自由なものから 旋律を犠牲にし和声的役割を果たすものになったりしました。 これらの要因が、厳格な“ポリフォニー様式”の崩壊を誘発する要因と なったと考えられるでしょう。今日の演奏会を締めくくるラッススの 作品により、その崩壊の様子が明確に聴きとれることと思います。

最近は、以前に比べると、この時代の音楽を耳にする機会に恵まれるように なりましたが、広く一般に浸透したと言える状況には至っていません。 本日お越しの方の中にも、この時代の音楽を初めてお聴きになる方も おいでかと思います。本日の演奏会を通して、 ルネッサンス音楽に興味を持っていただければ幸いです。


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